オーバーホールの必要性

はしご車、高所放水車、高所作業車、化学車のように機構が複雑で高価、且つ、安全性や確実性がより強く求められる消防車にあっては、長期間にわたって安全性や性能を維持するために、通常の保守点検に加え、一定年数経過後に専門技術者によるオーバーホールが必要となります。

対象車両例

はしご車
はしご車

屈折はしご付消防車
屈折はしご付消防車

大型高所放水車
大型高所放水車

 

大型化学消防車
大型化学消防車

原液搬送車
原液搬送車

空港用化学消防車
空港用化学消防車

 

●オーバーホールは、当該消防自動車の機器・装置構造物を脱着、分解の上、潜在的不良箇所劣化部分及び消耗部品の修正並びに取替を行い、機能・性能の復元を図り将来にわたる「安全」「安心」を確保するものであります。

オーバーホール作業1 オーバーホール作業2

●オーバーホールの必要性を証明することとして、分解しなければ発見できない重大な不具合があります。これらは外観による点検では発見できず、重大事故につながるものがあります具体例を以下に列記しました。はしご消防車の安全基準から抜粋しております。

オーバーホール作業3

 

具体例

 

具体例1. 起伏シリンダのピストン部の変形

変形写真
変形写真

取付場所
取付場所

 

ピストン本体(材質:砲金)の分子漏れ(最大圧力で人が汗をかく程度の漏れ)が原因で生じた不具合で、今後変形が進むとピストンの変形部がシリンダの内面を傷つけ、シリンダ内部の油漏れによりはしごが倒伏するおそれがあります。

 

具体例2. 起伏中心軸の磨耗

磨耗写真
磨耗写真

取付場所
取付場所

 

正常写真
正常写真

 

グリースの補給不足のため、軸と軸受の間で焼きつきが生じたことによる不具合で、軸の摩耗により軸受にガタが生じると起伏の運動に異常が生じるおそれがあります。

 
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具体例3. 起伏シリンダー軸の焼きつき

焼き付け写真
焼き付け写真

正常写真
正常写真

 

取付場所
取付場所

 

グリースの補給不足のため、軸と軸受の間で焼きつきが生じたことによる不具合で、軸が完全に焼きつくと、起伏時にシリンダーが揺動できず、シリンダーに曲げがかかりシリンダーが座屈して、はしごが倒壊するおそれがあります。

 

具体例4. はしごの下面ローラブラケットとローラの磨耗

磨耗写真
磨耗写真

正常写真
正常写真

 

磨耗写真
磨耗写真

正常写真
正常写真

 

取付場所
取付場所

 

ブラケットとローラ間に異物が噛み込んだことにより生じた不具合で、削られた粉で急速に消耗し、ブラケットが破断してはしごの伸縮ができなくなる恐れがあります。また、ローラが回転しないで、削られた異物ではしごの下面を傷つけ、強度の低下をまねくおそれがあります。

 

具体例5. ターンテーブルのボール軌道面の腐食

腐食写真
腐食写真

正常写真
正常写真

 

取付場所
取付場所

 

グリースの補給不足により生じた不具合で、不動体膜のはく離・生成の繰返しにより、ボールの軌道面に凹凸ができ、旋回ができなくなるおそれがあります。

 
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具体例6. 部品交換の必要性

はしご取付ボルト
はしご取付ボルト

ジャッキ取付ボルト
ジャッキ取付ボルト

 

ターンテーブル取付ボルト
ターンテーブル取付ボルト

特殊工具「トルクレンチ」
特殊工具「トルクレンチ」

 

交換作業
交換作業

 

ターンテーブル、ジャッキ、はしご等主要部品の取付に使用されている高張力鋼のボルトは、静的な負荷応力を受けた状態で、ある時間を経過したとき、外見上はほとんど塑性変形を伴うことなく、突然脆性的に破壊するおそれがあります。これを防止するためには定期的な交換が必要で、この交換工事は特殊な工具を有する整備工場でしかできません。

 

具体例7. 部品交換時期の推奨

部品交換時期の推奨

油圧ホース 7年
油圧ホース 7年

伸縮用ワイヤロープ 4~7年
伸縮用ワイヤロープ 4~7年

昇降機用ワイヤロープ 4~7年
昇降機用ワイヤロープ 4~7年

 

梯体のスライドパッド 4~7年
梯体のスライドパッド 4~7年

伸縮用スライドパッド 4年
伸縮用スライドパッド 4年

オイルタンク作動油4年・作動油フィルタエレメント 1年
オイルタンク作動油4年・
作動油フィルタエレメント 1年

 

パワーユニット用オイル 2年
パワーユニット用オイル 2年

ギヤケース用オイル 7年
ギヤケース用オイル 7年

はしご電気配線 7年
はしご電気配線 7年

 

はしご自動車を安全に使用するためには、必要に応じ、部品交換をしなければなりません。これを確実に実施するには、オーバーホールの機会にまとめて行うことを推奨しています。なお、定期交換部品の多くがオーバーホールに合わせて交換時期を設定しています。

 
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具体例8. 詳細な点検整備の必要性

検査治具1
検査治具

検査治具2
検査治具

 

昇降機落下防止装置点検
昇降機落下防止装置点検

 

昇降機落下防止装置および過荷重自動停止装置の点検は、特殊な検査治具、広い検査場所、経験豊かな検査技術、多くの検査時間等が必要であるため、消防本部において詳細な点検整備の実施が困難な状況です。機会を設けて、これらの条件が整っている整備工場で点検整備を行うべきです。なお、特殊な検査治具とは、ワイヤロープが切断した状態をつくるもの、地面近くで荷重をかけられるもの等があります。

 

具体例9. コントローラの不具合発生傾向

コントローラ(ジャッキ関係)
コントローラ(ジャッキ関係)

コントローラ(ジャッキ関係)分解
コントローラ(ジャッキ関係)分解

 

コントローラ(はしご関係)
コントローラ(はしご関係)

コントローラ(はしご関係)分解
コントローラ(はしご関係)分解

 

電子制御装置(コントローラ)等の電子部品の不具合発生は、8年目以降に増加する傾向にあります。この電子部品の不具合発生による、はしご使用不能状態を解消するために、8年目以前に電子部品の交換が必要です。

 
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